トランスフォーマー・キスぷれ
漫画版

第3回 2006年12月号(10月21日発売)


●ストーリー要約

 正にレギオンに食われようとするシャオシャオの前に現われたトランスフォーマー「ホットロディマス」は、アンチエレクトロンフィールドの影響で思うように体を動かす事ができない。レギオン達は触手を伸ばしてロディマスとの融合を試みる。抵抗する事もできず融合されようとするロディマスだが…。

 一方、当梨は、初めての融合以来まともに融合もできず、自らの無力さを痛感しひとり落ち込んでいた。そんな当梨に、オートルーパー“子-04”は、花を渡し元気付けようとする。しかし、当梨はその花を払いのけ走り去っていく。

 廃墟。コンボイは、レギオンの夢にうなされている。
 心配し呼びかけるメリッサに、コンボイは突如拳を向ける。だが、そこでコンボイは正気を取り戻した。コンボイは、自分の中の何かが心を奪おうとしていると訴える。

 カユはオートルーパーの摘んだ花を当梨に手渡した。オートルーパーの花で作った花輪を頭に乗せ、物思いにふける当梨。その姿を見たりんごは、無邪気にその花輪を取り上げ、ままごとのように当梨に食べさせようとする。レギオン襲来のサイレンが鳴り響く中、当梨はぐしゃぐしゃになった花輪を前に、自分もオートルーパーの差し出した花を払いのけた事を思い出して、自らの仕打ちを恥じるのだった。

 街では、どうした訳かコンボイがレギオンの軍団を率い、オートルーパー隊と交戦していた。そこに現われたホットロディマスが、コンボイの前に立ち塞がる。その姿は、以前とは違うパラサイテック融合化ボディだ。人間側と交戦するコンボイを偽物と断じるロディマス。闘いは始まった。

 そこに到着した子小隊。いまだ意気消沈したままの当梨を除くオートルーパー全車が作戦に投入されるが、コンボイのサーフブレードの一閃で瞬く間に撃破される。同僚の危機を前にして、当梨はオートルーパー“子-04”に、弱い自分だが変わりたいと告げる。オートルーパーは、待ち望んだ当梨のその言葉に応え、2人は再び完全な状態でのキス融合を果たした。そして、依然として激しい闘いを続ける、2体のトランスフォーマーの間に割って入る。

 ここに、自らの自信と信念を取り戻した当梨の、本当の物語が始まったのだ。


■今回の主要キャラクター(ほぼ活躍順)

・ロディマス&シャオシャオ レギオンに食われようとするシャオシャオの前に現われたロディマスだが、アンチエレクトロンフィールドの影響で身動きがとれず、レギオンに融合されかけてしまう。
 その後、レギオンを率いてEDCと交戦するコンボイの前に新たな姿で現われ、三つ巴の闘いが始まる。

・当梨 第1回での融合以来、オートルーパーとの融合も上手く行かず、自らの存在価値に疑問を抱き自信を喪失した当梨。オートルーパーの励ましにも耳を傾けなかったが、自らの行為がオートルーパーを傷付けていた事を悟り、自分を変えようと望む。

・オートルーパー“子-04” 自信を喪失し塞ぎ込む当梨をなんとか励まそうと花を渡すが、当梨にはその気持ちは通じなかった。だが、その後、自らの過ちを悟り自信を取り戻した当梨の言葉に応え、見事に再度のキス融合を果たす。

・カユ 子小隊メンバーのカユは、塞ぎ込む当梨とそれを励まそうと試みるオートルーパーの間に立って仲を取り持つ為に立ち回る。

・りんご 子小隊メンバーのりんごは、物思いにふける当梨から、オートルーパーの摘んだ花で作った花輪を取り上げ、当梨に食べさせようとする。この分別の無い行動は、当梨に自らの行為もまた他人を傷付けていたのだという事を気付かせるキッカケとなった。

・コンボイ&メリッサ レギオンの悪夢にうなされるコンボイは、何かに心を奪われてしまうと語る。その後の描写では、何故かレギオンを率い、EDCと対峙するが、それが「何かに心を奪われた結果」なのか、他の目的あっての事なのかは不明。


■解説


 漫画版の連載は、今回で最終回。連載開始予告の時点で、「短期集中連載」とされており、内容的には3体の主役トランスフォーマーの登場と活躍をそれぞれ描くのに最低限必要な回数という事だろう。 作品は当梨の人間的な成長を描き終幕としているが、ストーリー上は完結しておらず、これまでの展開で謎だった要素もいくつかは解決していない。そればかりかラジオドラマ等でも語られていない新たな謎が登場してしまった。

 今回登場した新たな謎、コンボイがレギオンを率いてEDCに対峙した事に対する理由は語られていないが、その前にレギオンの悪夢にうなされるコンボイは「なにかに心を奪われてしまう」と語っている。それが、今回の行動と直結していると考えるのは、ある意味自然だが、作中でのコンボイは正気を保っているように見え、メリッサが「本当の敵」の正体を訴えようとするシーンがある事から、他の理由があっての行動という解釈も出来る。謎は深まるばかりである。
 ラジオドラマでは、何度もロディマスがコンボイを偽物呼ばわりする描写が見られるが、死んだ筈のコンボイが敵勢力を率いて人類側の組織と対峙していれば、そう思うのも無理からぬ事だろう。

 拘束されたシャオシャオとレギオンに融合されようとするロディマスの、その後の具体的な描写は無いが、次に姿を現した時には、新たなキスぷれ版ボディーにシャオシャオと融合した状態であった。その際のセリフから、シャオシャオは、キスをするのと引換に、ロディマスを自分の目的の為に協力させる約束を取り付けた事が伺える。シャオシャオの目的とは、「大事な人を取り返す」。つまり、メリッサをコンボイから取り戻す事にある。何故かレギオンを率いて現われEDCと交戦するコンボイは、ロディマスにとっては偽物にしか見えず、その討伐は計らずもシャオシャオと利害が一致する。
 ロディマスの新ボディの初登場カットでは、両腕のファイヤーパターンが実際に炎をあげているかのように描かれている。

 シャオシャオが拘束されていた施設は、漫画版ではどこなのか説明されていないが、ラジオドラマ第29回の描写から、EDC本部の地下にある秘密施設だと考えられる。つまり、EDC本部の地下にはキスプレイヤーを拘束しレギオンを使った実験をする施設があるという事になり、この時点でEDCが、その本質として人類の為に活動する組織では無い事が伺える。これこそが、キスぷれ展開初期から言葉だけが繰り返されていた「EDCの陰謀」に直結しているものと考えられる。
 
 338ページのコマでは、何故か天桜司令官の傍らに、(ロディマスが変形する筈の)フォードGTが描かれている。個人保有の車とも解釈できるが、漫画版第1回では、天桜司令官もオートルーパーを乗用しており、EDCの作戦行動中である事を考えれば明らかに不自然だ。
 このフォードGT、ペン入れも満足にしていない事から見て、なんらかの間違いで描かれてしまったものかもしれない。

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