トランスフォーマー・キスぷれ

玩具製品・ホットロディマスxシャオシャオに付属のドラマCDレビュー。


 本作は、過去2作のCDと同様に、ラジオドラマ採録と新録ドラマ、主演声優のメッセージで構成されるが、過去2作では5本ずつだった採録ドラマは、今回は10本(第11〜20回)収録されている。

 新録ドラマ『今夜は大漁!?』は、ロディマスとシャオシャオの交流を描き、トランスフォーマーと人類が袂を分った事件にも言及する内容。キスぷれは、G1シリーズの途中から分枝した世界観を持つので、ロディマスもキャラクターとしては、G1アニメ版と同一人物と見られるが、ロディマス役の声優は、G1アニメ版の石丸博也氏では無く、2004年の「トランスフォーマー・スーパーリンク」に登場する同名キャラクターの声を演じた置鮎龍太郎氏が起用された。スーパーリンク版ロディマスは、G1アニメ版とは別人でキャラクター性もかなり異なるが、今回のドラマで置鮎龍太郎氏は、G1アニメでの石丸博也版ロディマスを意識した演技を披露している。

 今回のレビューでは割愛するが、ドラマ中では、G1アニメ版トランスフォーマー2010及び、トランスフォーマー ザ・ムービーでのロディマスのセリフが端々に引用されている。その数は、一部を改変したものや、意識して引用したか定かでは無いものを含めると相当数に登るが、セリフの引用自体が目的と化した感があり、作中での会話の流れから乖離した不自然な個所が目立つ。


●『今夜は大漁!?』エピソード概要

 ロディマスとシャオシャオは、今日も魚を釣っている。なにしろ、逃亡者であり無一文の彼らは、魚を釣って食い繋ぐしかない。シャオシャオの服もチャイナ服一枚だけしかないような生活が続いているのだ。釣りの名人と大口を叩くロディマスだが、結局一匹も釣れずに終ってしまう。

 二人は帰路につき、コンボイとメリッサに関する話題に触れる。
 ロディマス曰く、レギオンを率いて人類と対峙するコンボイは偽物に違いなく、この戦いに終止符を打ち、再びトランスフォーマーと人類の関係を修復する事が自分にできる唯一の罪滅ぼしなのだという。しかし、シャオシャオにとってはコンボイが本物か偽物かは関係無く、親友であるメリッサを奪った事こそが問題なのだ。

 その途上、ラジオからニュース速報が流れた。復旧したばかりのベイブリッジにレギオンの集団が現われ、交通規制が敷かれているというのだ。
 一も二も無く、現場に急行するロディマスとシャオシャオ。そこに居れば、メリッサやコンボイも現われるかもしれない。
 ゴーグルを装備し索敵を開始するロディマス。計23体のレギオンを確認し、その群れの中に飛び込んだ。ロディマスはシャオシャオにキスを要求するが、シャオシャオは、そんな気安くキスできないと拒否。仕方なく、通常武器の2丁拳銃で攻撃を開始する。だが、レギオンはまだまだ無数に潜んでいた。シャオシャオを触手で絡め融合しようとするレギオン達。その危機にロディマスはシャオシャオの名を叫び助けに向う。そう、最初に出会った時からロディマスはいつだってシャオシャオを助けにきてくれたのだ。
 無事に助け出されたシャオシャオは、ロディマスとキスを交わし、パワーアップ。釣り竿が変形したエグゾーストエリミネーターと、2丁拳銃が変形したダブルトンファーを使った攻撃でレギオンを次々に撃破していった。

 ロディマスは回想する。2005年のユニクロン戦争で宇宙へ放逐した破壊大帝ガルバトロンが地球の東京へ墜落し、東京は壊滅的な被害を受け、人類はトランスフォーマー全体を敵視するに至った。ロディマスは、その責任は全て自分にあるとマトリクスをウルトラマグナスに返上したのだ。彼は心の助けを求め、悩み苦しんでいる。しかし、自分とシャオシャオのパートナーシップに、人類とトランスフォーマーの未来の姿を重ね合わせ希望を抱くロディマスだが…。そのシャオシャオは、怒り心頭でロディマスに怒鳴り散らす。融合を解除するタイミングが悪く、シャオシャオは海に放り出されてしまっていたのだ。1着しか無いチャイナ服がびしょ濡れになったシャオシャオは、ロディマスの釣り竿にそのチャイナ服を干している。その姿はあたかも大漁旗を掲げているかのように見えたのだった。


■ある事件

 今回のドラマCDでも一部語られているが、本製品では、解説書やキャラクターカードの記述で、今まで不明だったバックストーリーの多くが説明されている。

 トランスフォーマー ザ・ムービーのラストにおいて、ロディマスコンボイに投げ飛ばされたガルバトロンは、その後の話であるトランスフォーマー2010では、惑星スラルの溶岩の中で眠りについていた事になっていたが、キスぷれ設定では、ガルバトロンはスラルでは無く地球の東京に墜落、破壊の限りを尽くし、この事件により人類はトランスフォーマー全体を敵視する事になったとされている。これが、今までのキスぷれ作品/設定で、「ある事件」とだけ表現されていた、人類とトランスフォーマーが袂を分けるきっかけとなった出来事なのだろう。

 また、その墜落の最中、大気中に飛散したガルバトロンの細胞には、メガトロンをガルバトロンに転生させたユニクロンの細胞も含まれ、それがレギオンを発生させる要因となったという。レギオンは、ガルバトロン墜落のクレーターの跡地に建設されたE.D.C.本部を目指して侵攻しているとも語られており、オートルーパーがE.D.C.地下施設で建造されたという既出設定と合わせ、ガルバトロン/ユニクロン、オートルーパー、レギオンとE.D.C.には密接な関わりがある事が伺える。

 キャラクターカードには、ロディマスはレギオンとパラサイテック融合し、さらにシャオシャオのキスを受け、新たな姿に生まれ変わった旨が記載されているが、これはレギオンをオートルーパーに入れ換えれば、漫画版第2回におけるコンボイの復活と同様のプロセスとなり、ここでもオートルーパーがレギオンと本質的に同等の存在である事が伺える。
 「パラサイテック融合」とは、今まで具体的にどのような状態を指す言葉なのか説明された事は無かったが、これまでの各種設定や作中描写を踏まえるなら、『レギオン(あるいはオートルーパー)が、他の物体(あるいは生物)に融合するプロセス』と定義できそうだ。
 パラサイテック融合とキスプレイヤー能力による融合は別の物と見られるが、設定ではレギオン発生と前後してキスプレイヤー能力者が確認され始めたという件があり、これも一連のガルバトロンに関わる設定に関連付けられるのかが注目される。

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